エピローグ


「博人、起きろ〜〜!」
翌朝、珍しく早起きした次郎が扉の前で大声を出していた。
扉を叩いてみる。反応なし。
ドアノブを回す。
回らない……はずだが、意外なことに開いた。
「あれ? 不用心だなぁ。確かに宿泊客は俺たちしか居ないけどよ」
部屋の中に入る。
布団がたたまれて置いてあった。
ふと、机を見ると紙が置いてあった。
開いてみる。
「手紙……?」

この部屋のドアを一番最初に開けるのは誰だかわからないけど、書置きを残しておきます。僕は高校三年生です。実は、受験勉強をつい最近まで懸命にやっていた人間です。いろいろとあって、それが嫌になり、こうやって旅行に出たんだけど、思いがけないことになった。この三日間、本当に楽しかったです。いつもの生活とは違って、刺激にあふれた毎日でした。そうやって、一緒に居るうちに今までの自分と違う自分が見えてきました。昨日の疾君と宗也さんの一件を見て「自分もなにかできたらなぁ」と思いました。そして、唐突に何かがしたくなったのです。居ても立っても居られない気持ちって奴で、未練はあるものの決意しました。まだ、間に合うはず。だから、僕は戻ります。戻って、頑張って大学に合格します。それが、今自分にできる唯一の行動だと思いました。改めて言います。この三日間、本当にありがとうございました。

次郎は黙り込んだ。
折りたたんで、ポケットにしまうと、宗也に声をかけ、手紙を見せた。
驚く宗也を尻目に、次郎は旅館にいる人全員に同じように見せて回った。
「どう思うよ?」
次郎が言った。
「頑張る気になった、ってことか。やるじゃん、先輩」
「へぇ。こんなのが憧れの対象になることもあるんだ」
「こんなのとはなんだ、こんなのとは」
最初から、彼は確かに部外者だった。だが彼自身、それを気にしないようにしていた部分があったんだろう。
だから、むしろ別れると決めた後にそのことに思い至ったという感じであった。
「受かるといいよね、大学」
「博人君は真面目だし、大丈夫だとおもうよ。 さ、私達は私達で卓球トーナメント第二弾よ!」
「え〜〜っ!」
「え〜っもなにもない! さ、やるわよ!」
由香子が先陣を切って奥に姿を消す。
苦笑やため息をともなって、他のメンバーもついていった。
一人が抜けた穴は少し寂しかったが、それが彼の望みとなるとしょうがないと思った。
あと一週間。自分達は何をして過ごそうか?



両親は思ったより怒ってなかった。
父は「自分で答えを見つける旅に出て見事に見つけてきたんだ。それについては文句なんていわない。だが、親を心配させるな」
そんな感じのことを言っていた。
母は「もっと相談してくれれば良かったのに。でも、早くに帰ってきてくれてよかった」
それだけいって、母は結局怒りはしなかった。
自分が戻ってきた日常。それを再スタートにするのは自分である。
いいスタートにしよう。ゴールしたら、手紙を書かないとな。
つい、今朝まで一緒にいた者たちを思い出す。
「さってと、頑張るかな」

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あとがき
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