プロローグ


青野博人、18才。現在の状況は家出中、と言ったところ。
自分でもとった行動が信じられないが、結局そういうことなのだ。
十二月のこの時期の家出など、受験生のすることではない。
だが、現実問題、彼はローカル線に乗って街から逃げてきた。
偏差値の支配する世界から、抜け出してきた。
別段、勉強が嫌いだったわけではない。あの事さえなければ、こんな馬鹿な真似はしなかっただろう。

父さんの会社が倒産した。
洒落しゃれになってない。実に洒落になってない。だが、彼の父親は言ってのけた。
倒産と言っても、自分は別段職を失うわけではない。
そう言った父であったが、同僚は両の指では数えられないほどいなくなったらしい。
博人は嫌になった。
普通に大学を出て、普通に会社に行く。それが、どうしようもなく無駄なことに思えた。
もとより、進路なんかいい加減だった。
自分の実力にあった大学で、職に就くのに有利そうな学部を選んだ。
そんなもんだ。普段の生活を捨てるのも、躊躇ちゅうちょはしたが実行できた。
夢が無いから、とでも言えばいいのかもしれないが、あいにく向上心はある。
考えなしに家出したわけではない。
場合によっては、そのあとなんとか食いつなぐための覚悟も決めてある。
もっとも、まだ旅行として出たつもりではいる。

三両しかない列車が、駅を発車する。綺麗な雪景色が流れていく。
彼としては、今はのんびりしたかった。
そのために、旅行にでたことにしておきたかった…。

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