2006年07月10日

海と夏の妹ボンバー

いつも零と呼んでる、御剣零@AQUAと並行ペースで短編小説を定期的に書くことになりました。
どこまで続くかわかりませんがよろしくお願いします。

初回のお題は「夏」。
夏と言えば海。

ということで。なんとなくこんな感じで書いて見ました。
登場人物紹介。


◆沢田 充 (さわだ みつる)
・主人公。高2。口調がやたら悪く不良くさいが、重度のシスコン。
◆沢田 由宇 (さわだ ゆう)
・主人公の妹。小4。母親がいないのでお兄ちゃんっ子。テンション高い。
◆沢田 辰巳 (さわだ たつみ)
・主人公の父。ごつい親父。土木関係で働いてる。

◆岩井 住吉 (いわい すみよし = キツジ)
・主人公の悪友。とりあえず後先を考えない。

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「ックショウ! なんだって俺がこんなどうしょーもねぇ荷物番なんてやんなきゃなんねぇんだよ」
大声で言ってやりたいところだが、さすがにこれだけの人ゴミで注目を浴びるなんてまっぴらゴメンだ。
イライラをそのまま小声で吐き出す悲しい俺。ざけんなっての。
ああくそおおお! この暑いのに、なんだってボケらーっと待ってなきゃなんねぇんだよ!
 
元はと言えば、いつもの由宇のわがままだ。あのバカ妹はまたクソ面倒なことに
「お兄ちゃん、海行こう海!」
なんていきなり言い出しやがって。
「あ? 海?」
こちとら、バイトから帰って来て暑くて扇風機に当たってるところだってのに。ああああああああああ。
「お兄ちゃん、それ好きだよね」
もちろん、扇風機にあああああああって言ってることについて。
「扇風機はこのためにあるんだ。文句あっか」
「あたしもやるから全然文句ないよ」
「おう」
ああああああああああ。
「だからさ、お兄ちゃん聞いてる?」
ああああああああああ。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん」
ああああああああああ……。
「むぅ…」
あ、やべ。
「由宇きいいいいいいいっく!!!」
「ぐふぉあっ!?」
顔面に思いっきり靴下のつま先が入り、そのまま横倒しに倒れる。
いくら小学生の女の蹴りとはいえ、この容赦のなさは俺でもこたえる。
てか。おい。
「おい由宇テメェ……」
っと振り向くと、由宇は涙目で俺を睨んでた。
ああそれはやばいやばいやばい。これはやばい。あと少しトドメ入ると泣き出すぞコイツ。
「な、なんだよ?」
「………」
睨む由宇。固まる俺。
「わ、わかった聞いてなかったよ悪かったごめんって」
「……海」
「海がどうかしたのか?」
「行きたい」
いやわかってるが。なんだよコイツ。俺にどうしろってんだ。
「いや、行きたいのはわかったから俺に言ってどうするんだ」
「海行きたいの! だからお兄ちゃんに言ってるんじゃん!」
それはつまりこのバカ娘はこう言いたいわけか。
「なんだそれは俺に連れて行けといいたいのか」
「うんっ!」
さっき涙目だったのに、今は元気一杯に返事を返す由宇。
ああだからコイツはタチが悪いんだ。
「知るか。俺に言うな。友達とでも勝手に行ってこい」
「だって、由美も、しーちゃんも、もんちゃんも家族で行ったんだって言うんだもん。あたしもお兄ちゃんと行きたい!」
また始まった。コイツはいっつもこれ言い出すんだ。
sc1.gif
まぁ今は夏休みだ。確かにどこのご家庭でも海ぐらい行きますでしょうよ。
だがな。
うちじゃコイツのわがままに付き合えるのは俺だけなんだ。
わかるか?
小4の妹のわがままにいつも振り回される高2の兄の立場が。
だが、それでも俺も簡単に突き放せない。
俺が小5に上がるぐらいのときにお袋が死んで、その時由宇は幼稚園にも上がってなかった。
あのクソ親父は忙しくて家のことなんかなに一つやりやしない。
だからふざけたことに、その時から俺は由宇の母親代わりだ。こう見えて家事だって毎日俺がやってる。
今日だってこの扇風機タイムが終わったら洗濯物を取り込みに行く予定だったところだ。
つまるところ、わがままだからといって、俺が無視しきるわけにもいかない。
「いつも言ってるだろ。人の家は人の家、うちはうち」
「お兄ちゃん、夏休みどっか連れてってくれるって言ったのに、まだどこもいってないじゃん! もう夏休み半分過ぎちゃうよ! お兄ちゃんバイトが忙しいとか言いながら、いっつも家でごろごろしてるくせに!」
「なっ!? う、うるせぇよ! 別に俺だって好きでゴロゴロしてるわけじゃねぇよ!」
俺は家でなにかあった時に困るから夏休みだからといってバイトを増やしていない。
いつも通りのシフトなもんだから、実際のところ割と暇しているし、ない日はとことん暇だ。
だが俺の数少ない友達というやつは、皆が皆バカでとにかくバイトを詰めれるだけ詰めて、それで一気に稼ごうという魂胆らしい。
おかげで俺は一人暇しているわけである。
正直なところ、この小4の妹より暇しているありさまで笑える。
……笑えねぇ。
「ねぇねぇねぇねぇねぇ」
「揺するなうざいから、揺するな」
「あ、洗濯物取り込んでくるね」
いきなり取って返したように言い出す由宇。
ああ、こいつ頼みごとするときは、手の平を返したように手伝いするんだよな。
「そ、そんなことしても聞かないぞ」
「じゃあもう手伝いしないもん」
「手伝いはしろ。俺扇風機で遊んでるからお前洗濯物入れてこい」
「ダメ。嫌だもん」
「ああ、そう。じゃあもう夏休みどこにも連れて行かないからな」
「………」
あ、しまったつい。
ああああその顔すんなその顔はっ……!
「だああああああ! 話したきゃ洗濯物取り込んで来い! いいか!? 話聞くだけだかんな!」
「ううん……もうしょうがないなぁお兄ちゃんは」
ふざけろこのガキ!!!!
と言いたいのを堪える。落ち着け俺。落ち着くんだ。
「じゃあ、洗濯物もってくるね」
たったったと軽い足音を立てて由宇は廊下を走っていった。
はぁ、ようやく行ったか。
「海、なぁ」
そいや去年も行ってないな。
まぁ別に海が嫌いというわけじゃないんだが、これといって行く理由もなかったしな。
ポケットから携帯を出す。
スケジュール帳を開いてみると、狙ったように週末が空いていた。
しかし狙ったようにと思ったのは俺の今の心情であり、そもそも俺が週末を埋めるわきゃなかった。
ああ、くそ。
埋めときゃよかった。
いや今からでも遅くない。由宇が戻ってくる前に予定を入れちまえばいいんだ。
そう思って、俺は一番暇そうなキツジにメールすることにした。
『おい、土曜空いてるかこのヤロウ』
送信。
はぇえ。もう戻ってきた。
暇だなアイツ。
『うるせぇよ、俺はどうせフリーだ文句あるかこのヤロウ』
予想通りだ。さすがキツジ、将来ニート一直線だ。
『じゃあ付き合え。また由宇がうるせぇからトンズラすんぞ』
送信。
『由宇ちゃんが今度はなんだって? 充母さんが聞いてあげないとダメだぞそれは』
うは、うぜぇ。
他人事だと思いやがって。
『うるせえ死ね。海行きたいって言ってきかねぇんだよ』
あーもう面倒だ。
『それよかどこ行くよ』
送信。
『いいじゃんか海。いいよ海。行こうぜ海。』
あ?
おいざけんなキツジ。お前は今流行りのN・E・E・T。つまりニートだ。
そんなアクティブな行動はしちゃダメだ。
「取りこんで来たよーー」
おいテメェ由宇。タイミング悪すぎるぞコラ。
「あ、メールしてる。見せて見せて!」
「プライバシー侵害だやめろやめれ」
と、隠すものの、突き飛ばすわけにもいかず、結局抱え込むようにして隠すことになる。
「あー、卑怯だよそれは!」
「お前のほうが卑怯だぞ! 勝手に人の携帯見ようとすんな!」
ぴろら~りろん~♪
この音は、由宇の携帯の着信音……
「あ、吉兄ちゃんからだ」
「まさか……」
「え、ほんと!? お兄ちゃん吉兄ちゃん誘ってたんだ! なんだ行く気なんじゃん! ありがとうお兄ちゃん!!」
「あのクソキツジがあああああああああああああああ!!!」
さすがに今度ばかしは叫ばずにいられなかった。
そしてさらにタイミング悪く、
「あん? なに叫んでんだ充。うっせぇぞ。まぁいつものことだが」
「お父さんお帰り~! あのね、あのね! お兄ちゃんと海行くの!」
「おお、海かいいなあ。夏らしいな、おい。なんだ充、そんな顔して」
それはもう、どうしようもなくうざったい顔だ、クソ親父。
なんだこのタイミングの悪さは。そりゃそういう時間だけどよ。
「今日は水曜だな。じゃあ食い行くか。今週は由宇の番だぞ。何食いたい?」
「えっとね、えっとね。じゃあお蕎麦!」
「おう。ザルそばだな。シャワー浴びてくっからその間に準備しとけ。な?」
「うん」
「充、お前いつまでそんな顔してるんだ。どうせ決まったんだろ、由宇泣かすんじゃねえぞ」
「……ああもう」
知るか。知るか。
なんだってんだよ、もう。
「お兄ちゃん、土曜日楽しみだね」
満面の笑みで言ってくる妹に。
「……そうだな」
と結局俺は答えてしまうのであった。
 
 
sc2.gif
で、結局来た。来たさ。
来て愕然としたさ。忘れてたぜ、海がどんな場所か。
いや、わかっていたから嫌だったのに、決まってからはもう思考停止だったぞ。
海岸見渡す限り、人、人、人、人……。
ええい、まるで人がゴミのようだとでも言えばいいのか俺は! 言うぞ俺は!
「ハハハ、まるで人がゴミのようだっ!」
キツジが言った。
「お前が言うのかよ!!」
思わず突っ込んだ。
「なんだ、俺がいっちゃいけないのか」
「俺が言うんだよバカヤロウ。てかこのバカ。おいバカ」
「なんだクソヤロウ」
「なんで海来た。お前に海なんていうアクティブな場所がでてくるとは思わなかったぞ」
「それはだな、俺のハートがこの……」
キツジの視線が海岸をくまなく見渡す。
「水着美女おおおおおお!!」
ああ、そうだ。
コイツこういうやつだった。
海とか言った時点でアウトだった。
「吉兄ちゃん、元気だなあ」
「お前は思ったより静かだな」
隣の由宇に言う。
「えへへ、もう一回走り回ってすっきりしちゃった。人多いから、あんまりはぐれるわけにもいかないし」
「わかってんじゃねぇか。しかし駅のロッカーも全部埋まってやがるし、ろくな状態じぇねぇな。まぁそう思ってはいたけどよ……」
日焼け止めと、シートは持参してある。つまるところ忍耐力勝負は見えていた。
ああ、想像しなかっただけで準備周到な俺が素晴らしい。
「まぁ、まずは場所取りだよな……おいキツジ。バカ、公衆の面前で鼻の下伸ばしすぎだ」
「こうしゅうのめんぜん?」
由宇が聞く。
「他人がたくさんいる目の前で、って意味だ覚えとけ」
「さすがお兄ちゃん、もっの知りぃ~~」
「んなもん当然だろ? おいキツジ。なんだその顔は」
「お、お前そうやって頭の良さそうなところ見せようったってそうはいかねぇからな!」
「あ? わけわかんねぇよ、蹴飛ばすぞコラ。 それよか場所とってこい場所」
「ちくしょう不良優等生めっ!!」
わけのわからんことをほざいてキツジは人ゴミの中に突っ込んでいった。
おい、あのヤロウまた鼻の下伸ばしてんぞ。
「お兄ちゃん、思うんだけど」
「なんだ?」
「吉兄ちゃんに任せても多分、ダメだと思う」
「やっぱそうだよな」
視線の先では明らかに挙動不審で周囲から白い目で見られてるキツジがいた。
 
 
girl.gif
そして場所を確保した俺は、
「お兄ちゃん、ごめんね。荷物番、がんばってね!」
頑張るってなんだ頑張るって。
適当に由宇を追い払い、日焼け止めを塗ってグラサンをかけてぼけーっとし始めたところで冒頭に戻る。
ああクソ。
電車で来た俺たちに当然パラソルなぞ持ち込めるはずもなく、むしろそんなもん家にも転がっておらず、さんさんと照りつける太陽とにらめっこときたもんだ。
愉快だなおい。愉快すぎて反吐がでる。
由宇のわがままなんぞに付き合うからこういうことになる。キツジにも余計なこといった。
しかもあいつ全然戻ってきやしねぇ。どうせまた女の尻でも追い掛け回してるに決まってる。
ああクソ。
「おにーいちゃんっ!」
「あ?」
由宇がなにか手に持って戻ってきた。
「ほら、ヤドカリ。可愛いでしょ?」
「おう、ヤドカリか」
小さなヤドカリが由宇の手の平の上に乗ってる。
「ヤドカリいいよな。家担いで動いてるんだぜ。便利だよな」
「でもヤドカリって重そうだよね」
「おう。世の中の便利さってのは、何がしかの代償がいるもんだ」
「だいしょう?大きい小さい?」
「違う違う。便利になったら、代わりになにか面倒なことがあるってことだ」
「ふえ~、なるほど~。ありがと、お兄ちゃん。また一つ頭が良くなったよ」
「いいってことよ。あ、ヤドカリ元の場所に戻してやれよ」
「は~い。じゃあまた行って来るね~」
砂の上で歩きにくいはずだけど、由宇のサンダルは軽いステップでとたたたと離れて行く。
ああ、まぁ。いいか。由宇喜んでるし。
しゃあねぇ、一眠りすっか。どうせキツジ戻ってこないだろうし。
……暑い。
この状況で寝れるわきゃねぇよな。
と、ふと視界を丸いものがふわっとよぎった。
視線を動かすと、ビーチボールだった。
「すいませーん」
少し年上の女の人たちがこっち向いて声をかけてくる。
手元にあったそれを、軽く投げて返す。
距離は届いたものの、相手がうまく掴み損ねて、結局落としてしまったようだが。
それですぐ去るかと思ったら、
「あのぉ~」
「あん?」
小さな声で一人が「やめようよ」って言ってるのが聞こえた。
ちっ、悪かったな。
「なんですか?」
年上だし、仕方なく敬語を使う。
「えっと、お一人ですか?」
「あぁ、まぁ妹と友達と来てるんですけど」
また一人が「やだぁ、シスコンだよシスコン」とかぬかしてる。
うるせぇ。
「荷物番ですか? 大変ですね」
「ぼけっとしてるだけだし楽ですよ。どうせ覚悟してたし」
あとでキツジ捕まえるけど。
ああ、かったりいな。
別に、女と話すのが嫌ってわけじゃないけど、一人露骨に嫌がってるから余計かったりぃ。
「あの、私たちこの近くのK女大なんですけど、大学生ですか?」
「俺高2です」
そんなに老けて見えるか。ちょっとショックだぞ。
後ろでさっきのやつが「うわ、感じ悪いガキ」とか言ってるがもう無視。
ああメンドイ。キツジのバカこういうときこそ本領発揮して追い払ってくれねぇかな。
と、思ってると。
「あれ、お兄ちゃんお話中?」
助け舟はまた戻ってきた由宇だった。
「ん、ああ。まぁちょっとビーチボール飛んできたから返してただけだよ」
そういったら彼女達も悟ったのか、
「ありがとうございました」
と言い残して去って行った。
「あれ、お兄ちゃんもしかして逆ナンされてた? あたしお邪魔だったかなぁ」
「バカそんなんじゃねぇよ。ほんと、ちょっと返したついでに一言二言喋っただけだって」
てかこのガキ、なんで逆ナンなんて知ってるんだ。
そんなの俺教えた覚えないぞ。
「じゃあ、お詫びにジュースでも買ってくるよ。なにがいい?」
「あー。コーラでいいや。金そこにあるから、必要なだけもってけ」
「はーい。じゃあ買って来るね~」
由宇がまた軽いステップで去ると、入れ替わるようににゅっと現れる影。
キツジだ。
このバカどこいってた。
「おい、きつ…」
「この不良優等生モテ野郎がああああああああ!」
いきなりこちらの胸倉掴んできた。
「ちょっとまてお前くるし……」
「チクショウ! チクショウ! 俺だって女の子から声かけられてぇよ! 年上とかマジ好みだよ! お前ちょっと代われよ立場! マジ俺泣きそうだよ!」
ゆさゆさと揺さぶられて、最初は面倒だったが次第に。
腹立ってきておもっきり膝蹴ってやった。
「っ……!」
いわゆる弁慶の泣き所だ。こいつは効くだろう。
泣きそうなら泣いちまえコンクソ野郎。
「揺するなうっとうしい。第一俺を荷物番にして消えたのはどこのどいつだ? ああ?」
「じゃあ俺今から荷物番だ、いいからサングラス寄越せ。すぐ寄越せ」
仕方ないので、サングラスを外して渡す。
これで荷物番から解放されるなら安いもんだ。
「お前、荷物番するからには女のケツ追っかけまわして居なくなったら承知しねぇからな?」
「任せろブラザー。俺はクールに女の子から声かけられるのを待つぜ!」
「ブラザー言うなボケ。お前と同一視されるとかマジ勘弁。いいから大人しくくたばってろ」
そういい残すと、俺は由宇を探した。
いた、ちょうどジュースをもってこっちに歩いてきてるところだ。
「じゃあ俺は行ってくる」
「おう。俺の恋路を邪魔すんなよ」
バカはおいといて。
由宇もこちらの様子に気づいて、その場でぴょんぴょん跳ねてる。
こういう意味ではキツジ連れてきて正解だったな。
あのバカはほっときゃあのまま帰るまで荷物番してくれることだろう。
「お兄ちゃん、ナイスバトンタッチだよ!」
「おう、あのバカは自ら進んで荷物番引き受けたぞ」
「あれ? 吉兄ちゃん、随分今日は親切だね?」
「気にしなくていいぞ、親切じゃなくて下心大ありだから」
「そうだね、吉兄ちゃんがそういうのなしで替わるわきゃないもんね」
さすがキツジ。小4にもしっかり把握されてる。
「さっきはごめんね、邪魔しちゃって」
「だからそんなんじゃねぇって言ってんだろうが、バカ」
「うん、じゃあ、今からあたしが相手してあげる」
「妹に相手されてもなあ」
「ぶぅー…いいじゃん、可愛い妹の何が不満なのよう」
頬を膨らます由宇。
ったく。
「しゃあねぇ、付き合ってやるか」
「そうこなくっちゃ! じゃあ泳ご、お兄ちゃん!」
言った瞬間にもう波打ち際に走り出してる。
しかし、我ながら逆ナン蹴って妹と戯れるってどうなんだ。
さすがにキツジのバカは置いとくにしても、これってねぇんじゃないか。
「お兄ちゃん、早くぅ!」
……ま、いいか。
 
 
結局、日が傾いてくるまで由宇に付き合わされた。
あいつ、泳ぐの得意なんだよなぁそういや。すっかりペースに乗せられちまった。
あークソ、明日筋肉痛になんなきゃいいんだがな……。
「充」
荷物のところに戻ると、キツジが遠くを見てた。
「夕陽って綺麗だな」
「ああ、聞く気ねぇから安心しろ」
「くそおおおおおおーーーーーーーーー!!!」
俺のサングラスを勝手に投げ捨て、キツジは波打ち際に向かって走りだした。
「太陽なんて大嫌いだあああああああ!!!」
そのまま海にダイブ。もとい、派手にこけた。
「あーあ、吉兄ちゃんまたバカなことしてる。いいの、あれ?」
「ほっとけ、ほっとけ。そのうち構ってもらえないことに気づいて戻ってくる」
とりあえずサングラスの仕返しに、キツジの靴には砂をたっぷり盛り込んでおいた。
「うわ、酷いなぁ。お兄ちゃんも子供っぽいんだから」
「本物の子供には言われたくねぇよ」
「あたしもう10代だよ、10代! お兄ちゃんと一緒だよ!」
「うっせ、ガキ。一人前主張したかったらキツジに付け回されるぐらいになってみろ」
「や、嫌だなあ、それ」
キツジ、小4にも嫌われる。
まあ、自業自得だな。
「さて、仕度も出来たしぼちぼち帰るかな。楽しかったか?」
「うん、最高!」
「おう、それはよかったな」
手近なところにあった空き缶を掴んで、キツジに向かって投げつける。
ガコーーン
お、命中。
「ぐおらああああああああ!!」
空き缶を掴んでそのまま、あさっての方向に走るキツジ。
「ゴミは綺麗に持ち帰れえええええええええ」
意外と律儀なやつだった。
「捨ててきた!」
「ご苦労」
「じゃねぇ! お前俺に空き缶ぶつけるとはどういうつもりだこのヤロウ! あとこの靴はなんだイジメかイジメなのかっ!?」
「その前に俺のサングラス投げ捨てたろ」
「それ実害ねぇよ! 俺の実害大有りだよ! 靴使えなくなったらどうするんだよ!」
「元気だなぁお前」
「おう、ずっと座ってたからな」
そして実りなしとは、確かにイジメかもしれない。
「まぁ帰るぞ。いいな」
「うう……さらば俺の夏、さらば高2の青春……」
ほっとこう。
「さ、帰るぞ」
「うん、あのね」
由宇が顔を見上げてくる。
「ごめんね、わがまま言って。連れてきてくれてありがとう、お兄ちゃん」
こいつ、殊勝なことを……。
「ああ、いいってことよ、こんぐらい。いつもってわけにゃいかねぇけど、お前にゃ俺しかいねぇんだから言うだけ言ってみろ。な?」
「うん、大好きお兄ちゃん」
「バカ、やめろ。痒くなる」
「兄妹でいちゃついてるしいいいいいいいいい」
もはや無言で張り倒した。
少しばかしやばい音がしたが、キツジなら問題なかろう。
「電車までちょっと時間あるな。アイスでも食うか?」
「うん!」
まぁ、こういう夏もありだよな?
 
---END---
 
 
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あとがき風味。
 
このやりとり、どっかで見たなぁと思いながら書いてました。
イジメなのかっ!? の部分で思い出した。
ああ、これクラナドか。そういや居たな、こういうキャラ。春原だっけ?
なかなか書いてて面白かったです。
クラナド、3キャラぐらいしかクリアしてないし、やったの随分前だからすっかり忘れてたわ。
まぁ、なんか書いてたらこうなりました。そして結局一日でこれだけ書きました。バカでごめんなさい。
ちなみに現在午前6時です。
 
なんでこんな内容になっちゃったかは俺の脳内に聞いてください。
文中の挿絵は、6時に完成したこの作品をイタチに見せたところ、テスト勉強無視してイタチまで暴走した結果です。大丈夫なのかイタチw
とにかくイタチに大感謝ですw
 

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